結論を言えば、翌朝もイザークは女の子だった。ただし、俺もまた女の子だった。二人とも女の子になっていた。無言で互いの顔を見る。というか、多分胸を見ている。女の子の象徴。柔らかなそれ。 イザークはそのまま枕を殴り出し、俺は連絡をした。申し訳ありません、教官、今日は二人とも休みます。風邪をひきました。本当にひどい状態です…え?声が変?咳のしすぎでかすれております。 そのあとはすることもないので二人でトランプを繰り返した。ばば抜きに七並べ、神経衰弱。互いに他のことを考えていたから、かなりいい勝負になっていた。トランプにもいよいよ飽きると、俺はベッドに腹這いでイザークを見上げ、イザークはクッションを積み上げて嫣然と身体を預ける。上目づかいがえろいぞ、と、イザークは笑う。大きめのTシャツ1枚の格好だからというのもあるが、しかしほとんどはだかのイザークには言われたくない。シーツをまとった銀の髪の少女はまるで幻想めいて現実のものとは思えないほど。 「で…今日はどうすんだよ」 「…さすがに今日はその気にはならんな。女同士というのは敷居が高すぎる」 俺はイザークににじり寄り、手を伸ばして平たい白い下腹をなでる。ここに、たまごが、入ってるのかな。「さあな」 イザークはさらりとかわす。「そもそも、俺は子どもは苦手だぞ」「あれ?おととい生めっつってなかった?」「俺とお前の子なら少し見てみたかった。恐ろしく美形で優秀だろうさ」「その自信ってどっから来るの…」 イザークはまた笑い、クッションから降りて横になる。俺はその隣にもぐりこみ、丸くなった。もしもこのまま女の身体ならと考えて、そんなことはありえないとも考える。だが、と、俺の思考に続けるように、イザークがささやく。もしもこのままずっと女なら。 「女同士のやり方にも慣れていかないと…」 「…お前、そればっかりかよ」 俺たちは抱き合って眠った。女同士だってこれくらいはできるさ。イザークの身体は柔らかく、いいにおいがする。イザークも同じに思っているかな?合わせた肌がまろやかで、なんだか少し面白かった。 もしかしたらイザークも怖かったのかもしれない。俺の身体に逃げていたのかもしれない。 翌朝には俺たちは元の男に戻っていて、二度と女の身体になることはなかった。ずいぶん久しぶりに思える男同士のやり方には女のときに知った当てはまる感じはなかったけど、なんだかとてもしっくりときて、やっぱり俺もこいつも男だよなあとしみじみと思う。 夢とロマンの柔らかな胸の感覚は、もうとても遠くにしか思い出せない。 20110301 |