書類を片手にイザークに声をかけようとしたアスランは、ふと、その視線の向いている方を見た。ちょうど角を曲がり、金髪が消えていくところだった。 アスランは窓のそばに立ち、壁にもたれて外を眺めているイザークを見た。そっと隣でのぞきこむと、眼下を金色の頭が歩いていた。ディアッカがいた。 アスランは同じ本を何度も読み返しているイザークを見た。機械的にページをめくり、最後までいくとまた最初から開き、それを繰り返している。アスランはその様子にひとつの予感を覚えた。果たして、その場に駆け込んできた彼は、お前こんなとこいたのかよ、とイザークの肩を叩いた。イザークは何だ騒々しい、と睨みつけたが、あっちでお前のこと探してて、それで探してこいって俺わざわざ駆り出されたんだからなと言われると、ため息をついて本を閉じる。今いいところだったのにとぶつぶつと言い、まあまあ、と、肩を抱かれて歩いていく。イザークは近くなった金色の髪をぐいと引っ張ったようで、彼は、いてっ、とつぶやいた。ディアッカだった。 「なあ、ディアッカ」 アスランは言った。んー、と生返事を返すのに目をやると、ディアッカはぼうっと前を見ている。向こうから歩いてきていた銀の髪の彼の上官がふと目を上げ、ディアッカとアスランの姿を認めて口もとを少しゆるめた。そこでようやくディアッカはアスランを振り返った。 「なに? 悪い、ちょっとぼーっとしてた」 「いや…いいんだ」 何を言ってもしょうがないし、何を言ったって同じである。二人きりの鬼ごっこを思い浮かべた。追いつ追われつ終わらないそれ。しかも、二人とも鬼なのだ。 アスランは首を振った。カガリに会いたいな、と思った。 20110301 |