当然のことだが少年は少し抵抗めいたそぶりを見せた。…あくまでも、少し、だが。しかし、それをことさら何でもないみたいにして押し切った自分は、やはりわりと人でなしなのだとムウは思う。少なくとも、大人げないことだけは確かだ。 はりつめた肌をなぞっていく。血の色のそのまま透けて見えるような。この年頃だけが持ちうる瑞々しさは、汗のにおいさえどこか青い。モラトリアム、の一言がムウの脳裏をよぎり、どうしようもなく首を振り、追い払った。 く、と喉をさらしてディアッカがあえぐ。余裕はどちらもあまりない。ないように動いている。どうせこんなのは排熱なんだ。気散じらしい気散じのない中で、命のやり取りの余韻を引きずる者同士、時間を見つければ薄暗いところで抱き合って、熱を交わして、吐き出して、そして。そして?そうして、それだけのこと。どうにもならない。どこへも行けない。それでも、同じ衝動を持ちながら同じ行為に溺れれば、他に何をするよりまだいくらかは気はまぎれる。…何も生まないのがいい。何か生まれれば場所を取る。何か失えば穴が開く。何も生まないのはいい、何に煩うということがない。 丸みを残しながら尖り、肉をつけ始めながらも薄い、少年の特有のアンバランスな身体にくちづける。ディアッカは小さく身じろぎ、嫌がってみせたようだった。罪悪感と背徳感と寂寞感が耳の奥からこだまする。俺たちは大人と子どもで、男と男で、所属も違う、土壌が違う、互いの心はそれぞれ別の場所にある。だからこうして抱き合っている。戦場の異常さに、それはとてもよく似合うから。だからこそ、そうしているんだ。俺たちはそれ以上でも以下でもない。俺は悲しくて卑怯だな。お前は優しくて、卑怯だよな。 ああ、早く平和にできたらいいな。ムウは思う。お前がお前の大事な誰かの所に行けるように、早くそうなればいいのにな。そうしたら、俺はさ、結婚とかしたいんだ。俺のかわいい彼女に白いドレスを着させたい。きっとよく似合う。幸せになれる。 俺は幸せになりたい。だからこんなの、本当はもう、いやなんだけど。お前が俺から逃げてくれないかな。そしたら俺は、ごめんって言って、手を放すのに。もう遅いかな。何が悪かったのかな。俺かな。俺だよな… 俺お前のこと好きなのに。こんな意味じゃなくて、好きなんだけどな。ごめんな。 20110301 |